― 当院の鎮静・鎮痛への取り組み ―
① 鎮静・鎮痛とは(意識レベルの低下と痛みの緩和)
「鎮静」とは、お薬によって意識レベルを下げ、うとうととした状態にすることです。一方「鎮痛」とは、意識ははっきりさせたまま痛みだけを和らげることを指します。
内視鏡検査で行うのは、全身麻酔とは異なり、呼びかけに応答できる程度の深さである「意識下鎮静(中等度の鎮静・鎮痛)」です。
| 軽度鎮静=不安除去 | 中等度鎮静/鎮痛=意識下鎮静 | 深い鎮静/鎮痛 | 全身麻酔 | |
|---|---|---|---|---|
| 反応 | 問いかけに対して正常に反応 | 問いかけまたは触覚刺激に対して意図して反応できる | 繰り返しまたは痛みを伴う刺激に反応できる | 疼痛刺激にも反応しない |
| 気道 | 影響なく正常 | 処置を必要としない | 気道確保が必要なことがある | 気道確保が必要 |
| 自発呼吸 | 影響なく正常 | 適切に維持 | 障害される | 消失する |
| 心循環機能 | 影響なく正常 | 通常維持されている | 通常維持されている | 障害されうる |
② 鎮静剤を使用するメリット(苦痛の軽減と検査精度の向上)
内視鏡検査に対して「苦しい」「つらい」というイメージをお持ちの方は少なくありません。
- 上部内視鏡(胃カメラ):喉の違和感(嘔吐反射)や、空気を送り込むことによる膨満感。
- 下部内視鏡(大腸カメラ):挿入時の痛みや、お腹の張り。
鎮静・鎮痛を行うことで、これらの苦痛を大幅に軽減できます。受診者様の不安が解消されるだけでなく、医師にとっても「体が動かないことで、より精密かつ安全な観察が可能になる」という大きなメリットがあります。
質の高い検査は、がんの早期発見にもつながります。なお、検査への抵抗が少ない方もいらっしゃるため、鎮静剤の使用は「推奨」ですが「必須」ではありません。ご希望に合わせて選択いただけます。
③ 当院のこだわり(二酸化炭素送気と最新の薬剤)
当院では、より快適に検査を受けていただくために以下の工夫をしています。
- 二酸化炭素(CO₂)送気
- 検査中にお腹を膨らませる際、空気ではなく二酸化炭素を使用します。二酸化炭素は空気に比べて約100倍水に溶けやすく、空気の約35倍の速さで腸内から吸収されるという特性があります。吸収されたCO₂は呼気として自然に体外に排出されるため、お腹の張りが素早く軽減され、検査後の不快感が速やかに解消されます。
- 最適な薬剤の選択
- 不安を和らげ、検査中の記憶をほとんど残らない「鎮静剤」と、物理的な痛みや嘔吐反射を抑制する「鎮痛剤」を組み合わせて使用します。当院では、主にミダゾラム(鎮静剤)とペチジン(鎮痛剤)を併用し、一人ひとりの体質に合わせた細やかな調整を行っています。
鎮静剤は、ベンゾジアゼピン系のミダゾラムが広く使用されています。最近では、ミダゾラムより発現が早く半減期が短いレミマゾラム(ベンゾジアゼピン系)が内視鏡検査時の鎮静剤として承認され、普及が進んでいます。また、効果発現が早く持続時間も短いプロポフォールを併用する施設も増えています。鎮痛剤は、主にオピオイド性鎮痛剤の塩酸ペチジンが使われます。
| 薬品名 | 発現時間 | 作用時間 | 半減期 | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ベンゾジアゼピン系鎮静剤 | ミダゾラム(ドルミカム) | 1~2.5分 | 6~12時間 | 20~100時間 | 深い鎮静と強い健忘 回復が遅い |
| レミマゾラム(アネレム) | 1分 | 10~15分 | 40~50分 | 発現時間が早い 健忘回復が遅い |
|
| 静脈麻酔薬 | プロポフォール(ディプリバン) | 1分 | 3~10分 | 2~4分 | 発現時間が早く、覚醒も早い 低血圧に注意 |
| オピオイド性鎮痛剤 | 塩酸ペチジン(オピスタン) | 2~3分 | 2~3時間 | 3~5時間 | 鎮静作用弱く、鎮痛作用が強い 呼吸抑制、嘔気に注意 |
④ 安全性と副作用への対策
鎮静剤には、呼吸が浅くなったり血圧が下がったりする副作用のリスクがわずかにあります。
そのため、当院では検査中、常に血圧や血中酸素濃度をモニタリングし、異常があれば即座に対応できる体制を整えています。
ご注意
「狭隅角緑内障」、「重症筋無力症」と診断されている方は、使用できる薬剤に制限があるため、必ず事前にお申し出ください。あらかじめ主治医へ確認が必要な場合があります。
⑤ 検査後のご注意(リカバリールームでの休息と運転の禁止)
検査終了後は、薬の影響が消えるまでリカバリールーム(回復室)で30分〜1時間ほどゆっくりお休みいただきます。
ご自身では「意識がはっきりした」と思っても、ふらつきや判断力の低下が残っていることがあります。看護師が歩行状態などを確認した上で、ご帰宅をご案内いたします。
- 当日の運転は厳禁:自動車、バイク、自転車の運転は絶対に控えてください。
- 吐き気について:特に女性の方は、検査後に一時的な吐き気を感じる場合があります。無理をせずスタッフにお伝えください。
